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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」私はお二人に別れようと思った。

二人に別れて、小糠雨を十ちゃんの羽織に浴びながら、団子坂の文房具屋で、原稿用紙を一帖買ってかえる。――八銭也――

ワァッ! と体中の汚れた息を吐き出しながら、まるで尾を振る犬みたいな女だと私は私を大声あげて嘲笑ってやった。

帰えったら、部屋の火鉢に、パチパチ切り炭が弾けていて、カレーの匂いがぐつぐつ泡をふいていた。

見知らない赤いメリンスの風呂敷が部屋の隅に転がって、新らしい蛇の目の傘がしっとり濡れたまゝ縁側に立てかけてあった。

隣室では又今夜も秋刀魚か、十ちゃんの羽織を壁にかけているとクツクツ十ちゃんが笑いながら梯子段を上って来る。

「お芳ちゃんがたずねて来てね、二人で風呂へ行ったの。」皆カフェーの友達、此女は英百合子に似ていて、肌の美しい女だった。

「十ちゃんも出てしまうし、面白くないから出て来ちゃったわ、二日程泊めて下さいね。」まるで綿でも詰ってるかの様に大きい髷なしをセルロイドの櫛でときつけながら、

「女ばかりもいゝものね……時ちゃん此間あってよ。どうも思わしくないから、又カフェーへ逆もどりしようかって云ってたわ。