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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

夜――。霰まじりの雪が降りだした。

女達はまだ帰えって来ない。

雪を浴びた林檎の果実籠をさげて、ヴァニティケースをくれた男来る。神様よ笑わないで下さい。私の本能なんてこんなに汚れたものではないのです。私は沈黙って両手を火鉢にかざしていた。

「いゝ部屋にいるんだね。」

此男は、まるで妾の家へでもやって来たかの如く、オーヴァをぬぐと、近々と顔をさしよせて、

「そんなに困っているの……。」と云う。

「拾円位ならいつでも借してあげるよ。」

暗いガラス戸をかすめて雪がちらしのように通って行く。

私の両手を、男は自分の大きい両手でパンのようにはさむと、アイマイな言葉で「ね!」と云った。私はたまらなく憎しみを感じると、涙を振りほどきながら、男に云った。

「私は淫売婦じゃないんですよ。食えないから、お金だけが借してほしかったのです。」

隣室で、妻君のクスクス笑う声が聞こえる。

「誰です笑っているのは! 笑らいたければ私の前で笑って下さい! 蔭でなぞ笑うのは止して下さい!」

男の出て行った後、私は二階から果物籠を地球のようにほうり投げてやった。

女アパッシュ

二月×日

あゝ何もかも犬に食われてしまえ!