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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

一丁来ても二丁来ても二人共だまって歩いた。川の水が妙に悲しく胸に来て私自身が浅ましくなった。

男なんて皆火を焚いて焼いてしまえ。

私はお釈迦様にでも恋をしよう……ナムアミダブツのお釈迦様は、妙に色ッぽい目をして、私の此頃の夢にしのんでいらっしゃる。

「じゃあさよなら、あんたもいゝお嫁さんおもちなさいね。」

「ハァ?」

いとしの男よ、田舎の人はいゝ。私の言葉がわかったのか、わからないのか、長い月の影をひいて隣りの町へ消えてしまった。

明日こそ荷づくりして旅立とう……。

久し振りに家の前の三のついたお泊り宿の行灯を見ると、不意に頭をどやしつけられたようにお母さんがいとしくなって、私はかたぶいた梟の瞳のような行灯をみつめていた。

「寒いのう……酒でも呑まんかいや。」

茶の間で母と差しむかいで、一合の酒にいゝ気持ちになって、親と云うものにふと気がついた。親子はいゝな、こだわりのない気安さで母の多いしわを見た。

鼠の多い煤けた天井の下に、又母を置いて去るのは、いじらしく可哀想になってしまった。

「あんなもん、厭だねえ。」

「気立はいゝ男らしいがな……」

淋しい喜劇!