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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」

今さきから、じろじろ私を見ていた、二人の老婆が馴々しく近よると私の身体を四つの瞳で洗うように見た。

笑いながら涙をふりほどいている私を連れて、この親切なお婆さんは、ゆるゆる歩きだすと、信仰の強さについて、足の曲った人が歩けるようになったとか、悩みある人が、神の子として、元気に生活に楽しさを感じるようになったとか、天理教の話をしてくれた。

川添いのその天理教の本部は、いかにも涼しそうに庭に水が打ってあって、紅葉の青葉が、塀の外にふきこぼれていた。

二人の婆さんは神前に額ずくと、やがて両手を拡げて、異様な踊りを始めだした。

「お国はどちらでいらっしゃいますか?」

白い着物をきた中年の男が、私にアンパンと茶をすゝめながら、私の佗しい姿を見た。

「別に国と云って定まったところはありませんけれど、原籍は鹿児島県東桜島です。」

「ホウ……随分遠いんですなあ……。」

私はもうたまらなくなって、うまそうなアンパンを摘んで、一口噛むと、案外固くって、粉がボロボロ膝にこぼれ落ちていった。

何もない。

何も考える必要はない。

私はつと立って神前に額ずくと、プイと下駄をはいて表へ出てしまった。