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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」

こだわりのない二人のお婆さんを見ていると、こんなところにもこんな世界があるのかと、淋しくなった。

とうとう夜になってしまった。

港の灯のつきそめる頃は、真実そゞろ心になってしまう。でも朝から、汗をふくんでいる着物の私は、ワッと泣たい程切なかった。

これでもへこたれないか! これでもか! 何かゞ頭をおさえているようで、私はまだまだ、と口につぶやきながら、当もなく軒をひらって歩いていると、バスケット姿が、オイチニイの薬屋よりもはかなく思えた。

お婆さんに聞いた商人宿はじきわかった。

全く国へ帰っても仕様のない私なのだ、お婆さんが、御飯焚きならあると云ったけれど。――

海岸通りに出ると、チッチッと舌を鳴らして行く船員の群が多かった。

船乗りは意気で勇ましくていゝなあ――

私は商人宿とかいてある行灯をみつけると、ジンと耳を熱くしながら、宿代を聞きにはいった。

親切そうなお上さんが、帳場にいて、泊りだけなら六十銭でいゝと、旅心をいたわるように「おあがりやす」と云ってくれた。

三畳の壁の青いのが、変に淋しかったが、朝からの浴衣を着物にきかえると、宿のお上さんに教わって、近所の銭湯に行った。