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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

((三畳九円))

火箸       拾銭。

餅網       拾弐銭。

ニームのつゆ杓子 拾銭。

御飯杓子     参銭。

花紙一束     弐拾銭。

肌色美顔水    弐拾八銭。

御神酒      弐拾五銭 一合。

引越し蕎麦    参拾銭  下へ。

一、壱円弐拾六銭 残金。

「心細いなあ……。」

私は鉛筆のしんで頬っぺたを突きながら、つんと鼻の高い時ちゃんの顔をこっちに向けて日記をつけた。

「炭は?」

「炭は、下の叔母さんが取りつけの所から月末払らいで取ってやるってさ。」

時ちゃんは安心したように、銀杏返えしの鬢を細い指で持ち上げて、私の脊に手を巻いた。

「大丈夫ってばさ、明日から、うんと働らくから芙美ちゃん元気を出して勉強して。浅草を止めて、日比谷あたりのカフェーなら通いでいゝだろうと思うの酒の客が多いんだって……。」

「通いだと二人とも楽しみよ、一人じゃ御飯もおいしくないね。」

私は煩雑だった今日の日を思った。

萩原さんとこのお節ちゃんに、お米も二升もらったり、画描きの溝口さんは、折角北海道から送って来たと云う、餅を風呂敷に分けてくれたり、指輪を質へ持って行ってくれたり。