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せいじにかんするずいそう

政治に関する随想

伊丹 万作

「キネマ旬報 再建第三号」1946(昭和21)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,515 字 · 11 页

青空文庫

しかもこの利他ははなはだしく一方的のもので、利他的道徳を国民に強要する彼ら自身が国民に対して利他を実行することは決してないのである。この奇怪なる利他を正当なる自利に置きかえることによつて我々は新しい道徳の基礎を打ちたてなければならぬ。

特定の個人や、少数の権力者たちへの隷属や、犠牲的奉仕に道徳の基礎を置いたふるい理念をくつがえして、人類の最多数のため、すなわち、我々と同じ一般の人たちの幸福のために、自分たちの仲間のために奉仕すること、いいかえれば広い意味の自利をこそ道徳理念の根幹としなければならないのである。

この根本を、しつかり把握しさえすれば、現在我々が直面しているもろもろの事態に対処して行くうえに、おおむね誤りなきを期することができるはずである。たとえば、今回の選挙に際しても、多くの候補者のうちから、きわめて乏しいほんものをえり分けることは決してむずかしいことではない。

現在、私はまだ病床にしばりつけられている身体であつて、候補者に対する判断も、ラジオをつうじて行う以外に道がない有様であるが、現在までに私の得た知識の範囲では、あまりにも低級劣悪な候補者の多いことに驚いている。