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ぶんがくのたいりくてきせいかくについて

文学の大陸的性格について

宮本 百合子

「月刊文章」1940(昭和15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,628 字 · 9 页

青空文庫

永年支那に生活して「大地」をかき「戦える使徒」「母の肖像」をかいたパール・バックが、アメリカにかえって、新鮮な感受性と観察と批判とでそこにある社会生活に目をやったとき、この人間を不幸にする刻薄な神の働きを見出したのは深い意味がある。バックはそこで原始的なものの上をいきなり近代の歴史にさらされている支那の悲劇とは全然ちがう現代アメリカの高層建築的悲劇を見出しているのである。ホームの「自覚された鋭い正直さ」というものをもたない人柄に対する妻のキットの精神的苦悩も、その悲劇への抗議としてまた敗北として、バックは誠意をもって辿っている。

「アメリカの悲劇」が更に発展し高度になっている現代の局面をバックは内面からとらえた。そして非常に心をひかれる点は、この「山の英雄」のもっている作品として体質がいかにもバックのアメリカの婦人であることを思わせる量感に溢れていることである。「母の肖像」(今は「母の生活」という訳名で出ている)もそのことでは極めて独自な生命にみちた興味ふかい作品であった。しかし、私たちの心をうつ今日の感想はバックが「大地」をかき得たのは、大なる地の脈動を自身の体のなかにもっているというその内奥の近似が、彼女の人間生活の諸相への愛と理解との根底にあったからだと思う。