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ぶんめいしのきょうくん

文明史の教訓

大隈 重信

「早稻田學報 第百八十七號」早稻田大學校友會、1910(明治43)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,532 字 · 7 页

青空文庫

懐疑と渾沌(疑い怖れ迷う)

漸く知る母国の文(メキシコの日本児童)

これはよほど注意しなければならぬことである。例えば極端なる欧化主義――それに反動として起った漢学復興主義、かかる互いに相反した誤った二思想が、一時同時代に発生することなぞも、決して現在の日本の文明を益するものではないと信ずる。

懐疑と渾沌(疑い怖れ迷う)

我輩は時々人に語るのであるが、近頃の漢学復興の如きは思想それ自身に誤りのあるのは無論であるが、これも現在の日本人の思想が如何に懐疑と渾沌とを極めているかという、最もいい例証であると思う。日本人は進みながらもなお且つ自分の道を疑い怖れて、前後を顧慮している。而して国民はその間に処して、世界の文明と競争せぬばならぬのである。幸い日本人は欧羅巴人の有せざる、而して理解し能わざる東洋の歴史、哲学、文芸を有しておって、それになお西洋の歴史を明らかに学ぶことの出来る便宜を有しているのである。

漸く知る母国の文(メキシコの日本児童)

それと同時に、日本人は多くの弱点を有していることを、覚悟せなければならぬ。最も具体的で最も大なる事件は、思想を発表する言葉である。その言葉を表わす文字である。不幸にして日本人の言葉は、ほとんど世界に類を見ないほどの不統一である。