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ぶんげいじひょう
文芸時評
宮本 百合子
「中外商業新報」1937(昭和12)年7月30日~8月1日、3日、4日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,097 字 · 15 页
風雲児的な近藤、土方が戦いを一身の英雄心・栄達心と結びつけて行動したことから大局を破局に導いたところ、また甲陽鎮撫隊の構成の様々な心理的要素などに作者は軽く筆を突きすすめてはいるが、読後の印象は一種の読物の域を脱しない作品である。新講談の作者も試みる程度の事象と心理との分析に止まっている。
「明治元年」は林房雄というこの作者らしく「正論に従って、俗論とたたかい」「楽しく死のうとする」三春藩の官軍支持の若い兄弟を描いたものである。板垣退助を隊長とする官軍に属する医者の息子である一人の青年に「維新の業は我ら草莽の臣の力によってなさるべきだ」といわせたり「暗厄利亜国に、把爾列孟多というものがあるのを御存知ですか。この戦争後に、それができるのでなければ、ちょっと死ぬ気にもなれないというものでしょう」などと云わせているあたり「青年」を書いているこの作者としては苦もない仕上げの艶つけであろうと思われる。この作者に向って、正論とは何か俗論とは何かということについて一般の読者の心に湧く疑問の答えを求めようとしても無理であろう。その作者は、ナニ? 正論は即ち正論さ、それがどうした、といい得る人なのであるから。