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となんせんせい

斗南先生

中島 敦

「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,262 字 · 44 页

青空文庫

と言った。三造は、子供心にも、思い遣りのない伯父の軽率を、許しがたいものに思い、まるで自分が圭吉を辱しめでもしたかのような「すまなさ」と「恥ずかしさ」とを感じ、しばしは、顔を上げられない位であった。それから二年余りも経って、駄目だと言われた圭吉も、三造と共に四年から高等学校にはいった時、三造は、まだ、かつての伯父の無礼を執念深く覚えていて、それに対する自分の復讐が出来たような嬉しさを感じたのであった。

赤十字病院の病室には、洗足の伯父と渋谷の伯父(これは、例のお髯の伯父と洗足の伯父の間の伯父であった。その頃遠く大連にいた三造の父は、十人兄弟の七番目であった。)とが来ていた。もちろん、附添や看護婦もいた。三造がはいって行くと、伯父は寝顔を此方へ向けて、真先に、ちょうどその頃神宮外苑で行われていた極東オリンピックのことを彼に訊ねた。そして、陸上競技で支那が依然無得点であることを彼の口から確かめると、我が意を得たというような調子で、「こういうような事でも、やはり支那人は徹底的に懲して置く必要がある」と呟いた。それから、その日の新聞の支那時局に関する所を三造に読ませて、じっと聞いていた。