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となんせんせい
斗南先生
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,262 字 · 44 页
実際、近頃になっても伯父について思出すことといえば、大抵、伯父にとって意地の悪い事柄ばかりであった。死ぬ一月ばかり前に、伯父が遺言のようなものを予め書いた。「勿葬、勿墳、勿碑。」(葬式を出すな。墓に埋めるな。碑を立てるな。)これを死後、新聞の死亡通知に出した時、「勿墳」が誤植で、「勿憤」になっていた。一生を焦躁と憤懣との中に送った伯父の遺言が、皮肉にも、憤る勿れ、となっていたのである。三造の思出すのは大抵このような意地の悪いことばかりだった。ただ、一、二年前と少し違って来たのは、ようやく近頃になって彼は、当時の伯父に対する自分のひねくれた気持の中に「余りに子供っぽい性急な自己反省」と、「自分が最も嫌っていたはずの乏しさ」とを見るようになったことである。
彼は、軽い罪ほろぼしの気持で『斗南存稾』を大学と高等学校の図書館に納めることにした。但し、神経の浪費を防ぐために、郵便小包で送ろうと考えたのである。図書館に納めることが功徳になるか、どうかすこぶる疑問だな、などと思いながら、彼は、渋紙を探して小包を作りにかかった。
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右の一文は、昭和七年の頃、別に創作のつもりではなく、一つの私記として書かれたものである。