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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

十六。

何かの戦いに、初陣した。

「お弱い」

と、いう噂は消されて、武勇の名が高くなった。

学問好きで、書物ばかり読んでいるという風にばかり聞いていた里人は、

「あの細いお体に、具足を着けるだけでも、傷々しい程なのに」

と、彼の武勇を不審がった。

二度目、三度目と、半兵衛重治の出陣が重なるにつれて、その武勇は、敵の首を上げたり、乱軍の中を斬ってまわる武力ではなくて、智謀の勇だということがわかった。

「武門に生れながら体がお弱いので、弓や槍を把っては人におくるるであろうと、早くから孫呉の学問にお志しになったものとみえる」

と、家臣の者はいった。

禅へも心をよせた。

菩提山下に一寺を建てて、智識と聞けば、遠くからも招いた。旅の禅僧なども、絶えず泊っていた。

それでも足りないで、半兵衛は京都の大徳寺へ度々参禅した。――そして、戦と聞くや、いつも早馬で帰って来て、合戦に加わった。

戦場に出る時の扮装は、いつもきまっていて、それがまた、有名になった。

虎御門

という太刀は、彼の愛用の銘刀だった。

具足は、馬の皮の裏をわざと表につかって、それへ漆をかけた物であるから、粒漆が粗目に出て、渋い好みであった。