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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

一人に倣って、

また一人、また一人、続いて炎を運んでは、他の倉へも投げこんだ。

「――てッ、敵だッ!」

屯していた城兵が、初めて、飛び上がって絶叫したのが、おかしかったのか、彼方に立っていた藤吉郎と蜂須賀彦右衛門は、振り向いて、にっと笑った。

城兵は、度を失って、

「たッ、たいへん」

と、叫んだり、

「こ、ここだッ。出合えッ」

と、喚いたりしたが、急に藤吉郎たちへ、かかって来る者もなかった。

嘘みたいに悠々と、藤吉郎主従の者は、予定どおりな行動を終った。

「それッ」

後は、血戦あるばかりである。

敵も、忽ち、

「なにッ」

「なにッ。敵だと」

武者溜りの辺りから――また、水門口の方面からも、どっとここへ殺到した。

七つ八つ棟を並べている倉庫からは、もう濃い黒煙を吐いていた。

堀尾茂助の打ち揚げた狼火の音がその上で響いた。

藤吉郎は、彦右衛門と他一人を連れたのみで、煙に紛れて、城壁の内側を西へ西へ傍見もせず走り、やがて七曲り口の木戸へくると、

「ここだッ、ここだッ、打ち破れッ」

と、絶叫しながら、途中、敵の雑兵を斬って奪い取った槍の先へ、夜来、携えて来た例の瓢をくくりつけたのを――塀越しに振り上げ振り上げしては呶鳴った。