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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

御主人たるあなたが、そのように仰せられては、半兵衛は何と御挨拶してよいやらわからぬ。――なぜ、半兵衛見えたかとは仰せ下さらぬか。――そのようなお気遣いは、臣職にある者には、むしろ迷惑にぞんずる。構えて、私を先生などと呼ぶ儀は、今後おやめ願いとうござる」

「いや。そうか。――なるほど、かえってよくないかな」

「半兵衛の如き者を、さまで眼の中にお入れ遊ばす殿でもないかと思いますが」

「はははは、そうでもない。わしは無学だ、お身は学識がある。わしは野から生えた人間だ。お身は菩提山の城主の子だ。そういったような差かなあ。――何となく一目措けるよ」

「とすれば、半兵衛の不徳と申さなければなりません。以後、気をつけます」

「まあよい。追々と、主従といったことになろう。藤吉郎がもそっと偉きくなればな」

いっていることはまるで他愛もない。これで一城の守将かとおかしくなるほど、余りに権式張らなさ過ぎる。殊に、半兵衛に対しては、自分の愚も無学もまる裸にして見せた。学問も少しはありそうな、肚もできているような、そんな虚飾は、少しも持たなかった。

「時に。お召しの御用は」

半兵衛が、促すと、