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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
03 第三分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页
物見をやって、
「合戦か。何の火か」
見せにやると、その物見が見届けて来たはなしには、
「木下殿の隊は、高岡城下の町屋へ火を放ち、池田隊は、手分けして、田や畑をふみあらし、穀倉を封じ、城内への通路へ柵を結い、すべて高岡城を繞るものを取払って、孤立にする作戦の下に働いています」
とのことだった。
「敵は」
と、問えば、
「城兵は、しばしば出て、それと戦ってはいますが、この風に、火の手のまわり早く、町屋や部落のみか、野も山へも、燃え拡がって来たので、城門を閉じ、飛火の防ぎに、手も廻らぬ様子に見えます」
と、物見は答えた。
夜に入ると、風はやんだが、火はなお燃えやまず、数里の後方に陣していても、兵馬の影が赤く見える程だった。
六昼夜も燃えつづいた火に、高岡城はまったくの裸城となった。城外の田野民屋、みな焼け野原と化してしまった。
藤吉郎の軍三千は、遠く退いて、後はただ城内との交通を固く遮断しているだけに過ぎなかった。
北伊勢八郡の兵は、みな城主山路弾正の手足だったが、城内との聯絡が取れないため、その力は区々に分裂されてしまった。
「潰滅の兆が見えてきた。その方面の敵は、不肖池田勝三郎が当って蹴ちらしてみせる」