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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
03 第三分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页
龍呼
龍呼
「なんじゃろ?」
沿道の領民は、のんびりと見送っていた。まさか洲股へ出征の軍とは思いつかないのである。
木綿藤吉
米、五郎左
かくれ柴田に
のけ佐久間
と、唄にも聞えているその木綿藤吉が、きょうは馬上、人数の先頭に、大将となって通って行く。
人数もわずかだ。
それに、旗鼓堂々といいたいが、何となく士気も振わない。生気がない。
柴田、佐久間などが、先に洲股へ向った時は、まさに旗鼓堂々、大へんな勢いのものであった。それから較べれば、領内の巡視か、前線の一部の交代ぐらいにしか考えられない。
「おうーいッ」
清洲から一、二里。
井之口を過ぎ、正願寺附近まで軍が進んで来た頃、後から追いついて来る一騎があった。
「おういッ。待てえッ」
隊の後方にある荷駄頭が、
「や。前田殿だ」
側の兵を前列へ走らせて、すぐ藤吉郎のほうへ伝えた。
休め――という命令が前方から隊を一貫してくる。清洲を立ってまだ汗ばむ程も歩いていないのだ。隊伍隊伍の物頭たちも気のない顔である。勝算のない出征だ。卒伍のうちの顔いろを見渡しても、不安と無戦意が漲っている。
「おい、休むのだ」
「もうか」
「よけいなことをいうな。