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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

――しかし、それがしを斬ってしまったら、誰があなたに教える者があるか」

「ば、ばかなことを」

「ともあれ坐れ。お坐りなさらんか。小さい我執をお捨てなさい。真心もって、藤吉郎が今、あなたに告げ申さんとする儀は、一信長や、一蜂須賀など、そんな小さい、猫の額のような論議をしようというのではおざらん――まずお互いに、この日本に生まれ会うたことからのはなしだ。あなたにとって、信長は領主でないと仰っしゃった。いや至極の言だ、ごもっともなお言葉だ。藤吉郎も同感でおざる。――しかし不届きなのは、蜂須賀村ならおれの領土だという、あなたのお考えだ。間違っている!」

「なにが間違っているか」

「蜂須賀村はおろか、尾張一国はおろか、津々浦々、いかなる辺土たりとも、一尺の土たりとも、おれの物だという土は、この国においてはないはずでおざる。――ありと申すかッ。――それともありと申すのか、小六」

「……む、むむ」

「畏れ多くも、国土の上にしろし召す大君についてかく語り――いやかく教えているこのほうの前に、太刀をつかんで棒立ちに突っ立っておる不作法があろうか。野人礼をしらずといえ、あなたも二千の野武士の頭ではないか。