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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

「――余の儀でもありませんが、先頃、ごんぞと申す小者をもって、一応、御意向を伺ってみたあのことについてです」

云い出す、のッけに、

「その儀なれば、返書いたした通り、はっきり断る。此方の返書は、見ないのか、見たのか」

膠もなく、小六は、彼の口上の出ばなをヘシ折った。

「見ました」

相手の強硬を感じると――藤吉郎は素直にひとつ頭を下げ直して、

「が、あの折は、それがしが私の書信。今日は信長公のお旨として、お伝えするのでござる」

「誰からの乞いであろうと、織田家に加担する意志はない。小六の返書に二種はないのだ」

「では、可惜この地に、御先祖がお遺しあった門地を、あなたは御自身の代で、滅亡に導くお考えですか」

「なに」

「お怒りなされますな。小さくは、この藤吉郎も、十年前に一宿一飯の御恩のあるお邸です。大きくは、時勢のうえより見て、あなたのような人物が、野に隠れて、用いられずにあるのが遺憾でなりません。公私両面から考えて、蜂須賀の門地を、孤立自滅させてしまうのは残念と存じましたゆえに――かくは推参いたしたのです。いや、蜂須賀のために、私は、昔の御恩返しに、活路をひらきに参ったのです」