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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

虎のようにのそのそと這いまわりたいような烈しい気持ちになる。

部屋の中を綺麗にかたづけて寝床を敷く。ここにも敷布のない寝床。寝巻きがないので裸で私はおやすみ。水へ飛びこむような冷たさ。こっぽりと着物を蒲団の上にかける。着物の匂いがする。時々、枕もとで鯉がはねる。夜更けの街道をトラックが地響きをたてて坂を降りて行く。

冒涜はおつつしみ下され

私には愚痴や不平もないのだ

ああ百方手をつくしても

このとおりのていたらく

神様も笑うておいでじゃ

折も折なれば

私はまた巡礼に出まする

時は満てり神の国は近づけり

汝ら悔い改めて福音を信ぜよ

ああ女猿飛佐助のいでたちにて

空を飛び火口を渡り

血しぶきをあげて私は闘う

福音は雷の音のようなものでしょうか

一寸おたずね申し上げまする

どうにも空腹にたえられないので、私はまた冷い着物に手を通して、七輪に火を熾す。湯をわかして、竹の皮についたひとなめの味噌を湯にといて飲む。シナそばが食べたくて仕方がない。十銭の金もないと云う事は奈落の底につきおちたも同じことだ。トントン葺きの屋根の上を、小石のようなものがぱらぱらと降っている。ここは丘の上の一軒家。