轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんさいゆうき

新西遊記

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第十九号新春小説集」1950(昭和25)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 页

青空文庫

氷河の床まで這いあがると、狭いところをぬけてくる狂風が、地上にあるものは一切合財吹き払ってしまおうという勢いで、呵責なく吹きに吹く。氷河の終ったところから岩の割れ目をたどり、のろい苦しいのぼりを五分ほどやって休み、五分ほどのぼってまた休むという調子でうごめいているうちに、手足が痺れて岩についたまま動かなくなった。ひとりでに口が開いて、下唇がダラリと垂れさがり、眼にはいるものがみな二重に見えて焦点が合わない。すぐ上に、ザラメ雪の切通しが招くように光っているが、体力が尽きはてて上るも下るもできないことになった。

昨日までは、はるか下にカンプゥタンの村端の氷河が白いリボンのように光っていたが、今はもう青黒い無限の空間があるばかり、手を離せば一万尺の下へ逆落しである。そういううちに睡気がついてウトウトする。智海は岩の出っぱりに力なくしがみつきながら、これでもう万事休したと、心をきめて臨終の願をたてた。「十方三世ノ諸仏、ナラビニ本師釈迦牟尼仏、本来ノ願望ハ遂ゲザレドモ、父母、朋友、信者ノタメ、イマイチド生レ変ッテ仏法ノ恩ヲ報ズルコトガデキマスヨウニ」――この手が岩角から離れたときが今生の命の終りと、朦朧と偈をとなえていると、テンバが精気の霊薬だというコカの葉を智海の口もとにさしつける。