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しんていきららざか

新訂雲母阪

直木 三十五

「文藝春秋」文藝春秋、1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,792 字 · 12 页

青空文庫

その内に甚七は山へ入ってしまった。お新は三味を抱いて山へ入った。そして、甚七のよく知っている

お前の袖とわしが袖

合せて唄の四つの袖

露地の細道駒下駄の

胸とゞろかす明けの鐘

を弾き乍ら山を彷徨うた。勿論、この計は成就した。山の夜更けの三味の音は、甚七の注意を牽くに充分であった。

お新の近くへ、礫の落ちるのがつづくと共にお新は悟った。甚七の姿が、闇の中に立って、声が聞えると共に、このまゝ二人が捕えられてもいゝと思った。

「手紙をみた。有難いぞお新――お新、どうしてここへ、えゝ?」

そう聞かれると一番に浮ぶのは、美しいお俊の事である。

「お身は甚七に内通したな。」

と、云われた時の顔、女同士ですぐ判るお俊の心。

「江尻で皆さんに逢いました。」

「江尻で?――今日明日にはこゝら辺を通る筈だが――」

「お逢いなされても無駄で御座んす。」

「いや、身のあかりを立てさえすれば――」

「妾は何うなろうとも――」

途端に

「御用だ。」

躱して

「命は助けるぞ、道案内せい、お新、一まず京へ参ろう、話は道々。」

篝火をたいている山下の村々。

「お前の袖と、わしが袖か――」

「旦那いゝお声で――」