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まさことまき
方子と末起
小栗 虫太郎
「週刊朝日読物号」朝日新聞社、1938(昭和13)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,517 字 · 24 页
肉身が、憎み合ったらそりゃひどいというけれども、なんで、二人のあいだにそんな事実があろう※(感嘆符疑問符、1-8-78) 自分への、家庭での愛を二分していた二人だけにいっそう悲しいことだった。
しかし、末起には覗き込もうにも、暈やっとした大人の世界である。
やがて、末起にも訪れるものが来た。童女期から、大人へ移ろうとする境界に立って、郷愁のような遣る瀬なさ、あまい昏惑のなかでも、末起はときめくようなこともない。
春の曙光は、お祖母さまのことで暗く色づけられていた。童心は、やがて淡くなり、薄れるように去るだろう……。しかし、お祖母さまのことだけは、永遠に残るにちがいない……。そうして、末起は病む薔薇のように、思春期を暗い心で漂っていた。
ところが、それから四、五ヶ月経ったころふと、祖母の眼に異様なものを発見したのである。
それは、瞬きをときどき止めることで、精いっぱいに、※(「目+爭」、第3水準1-88-85)らきながら瞬くまいとする努力は、必死に末起の注意をひき、認めてもらおうとするらしい。
その表出は、祖母にあらわれた、たった一つのものであった。