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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页
百畳、いや二百畳、いや、三百畳敷位もあろうかと思われるその大広間と、虫のように黒くうごめくその数え切れぬ人々を、ぼんやり暗く照らしているのは、蓮華燈が六つあるばかり。その明滅する灯の下で、鮨詰めの善男善女達が、襲いかかる睡魔を避けようためにか、蚊の唸るような声をあげて、必死とナンミョウホウレンゲキョウを唱えつづけました。
しかし、眉間の傷も冴えやかなわが早乙女主水之介は、うしろの柱によりかかって、いとも安らかに白河夜船です。まことに、これこそ剣禅一味の妙境に違いない。剣に秀で、胆に秀でた達人でなくば、このうごめく人の中で、しかも胡坐を掻いたまま、眠りの快を貪るなぞという放れ業は出来ないに違いないのです。
「殿様え。ね、ちょっと、眉間傷のお殿様え」
「………」
「豪儀と落付いていらっしゃるな。鼾を掻く程も眠っていらっしゃって、大丈夫かな」
ちびりちびり三公は、二升徳利のどじょう殺しを舐め舐め大満悦でした。
そのまにいんいんびょうびょうと、七堂伽藍十六支院二十四坊の隅々にまでも、不気味に冴えてひびき渡ったのは丁度四ツ。――その時の鐘が鳴り終るや殆んど同時です。