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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页
呆然自失したように手槍を杖についたまま、じいッと主水之介のすばらしい男前にやや暫し見惚れていたが、のそりのそり近づいて来ると、上から下へじろじろと探るように見眺めながら、ぽつりと言いました。
「貴公、なかなか――」
「何でござる」
「当節珍らしい逸品でおじゃるな」
「わはは、先ず左様のう。自慢はしとうないが、焼き加減、味加減、出来は少し上等のつもりじゃ。刀剣ならば先ず平安城流でござろうかな。大のたれ、荒匂い、斬り手によっては血音も立てぬという代物じゃ。鯛ならば赤穂鯛、最中ならトラヤのつぶし※(「飮のへん+稻のつくり」、第4水準2-92-68)、舌の奥にとろりと甘すぎず渋すぎず程のよい味が残ろうという奴じゃ。お気に召したかな」
「大気に入りじゃ。御身分柄は何でおじゃる」
「傷の早乙女主水之介と綽名の直参旗本じゃ」
「なにッ、何だと!」
「のめせ! のめせ!」
「それきいちゃもう我慢が出来ねえんだ。こいつも同じ旗本だとよう! のめせ! のめせ! 叩きのめせ!」
はしなくも名乗った旗本の一語をきくや、手を引いていた農民達が、再びわッと犇めき立つと、不審な怒気を爆発させながら、揉合い押合ってまたバラバラと石つぶての襲撃を始めました。