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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

いかにもよく似ている。そっくりその儘である。けれども浩ではなかった。若し彼なら、これほど近くにいる自分を見ないで通り過ぎることは、絶対にないからである。そう思うと、何ともいえない安心が庸之助の心に湧き上った。そして、今まで気付かなかった秋の夜風が、ひやひやと気味悪く濡れた肌にしみわたった。彼はホッとして、額を拭きに手を上げたとき、そのとき、その瞬間! ようよう落付いた彼の頭に、電光のように閃いたものがある。それは浩が、常に云い云いした「強く生きろ!」という言葉であった。

「強く生きろ! 強く生きろ※(感嘆符二つ、1-8-75)」

庸之助は、今日までこんなにも悪く悪くと進んで来たにも拘らず、未だ自分を悪くなりきらせない何物かがあることを感じた。彼の言葉を思い出した瞬間、いかほど内心の或る物が動揺しただろう。彼はいても立ってもいられなくなった。「こうしてはいられない。どうにかしなければならない。」彼の目前には、体中に日光を輝かせて、勇ましく働いている浩が、両手をあげて自分をさし招いているのがまざまざと見えた。「こうしてはいられない!」彼はもう、目にも届かない、暗い深い谷底へと、ずるずる転落する自分を見離すことは出来ない心持になった。