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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
或ることに対して、ふだんこう自分はするだろうと思っていたこととはまるで反対に、或は同じ種類ではあっても、考えもしなかった強度で、いざというとき心が動いて行く。ふだん思っていることは、もちろん単に予想にすぎないのだから、絶対にそうなければならぬものではないが、あまり動じ過ぎたと思うことはしばしば感じられた。むやみにびっくりし、感歎し、悲しみ、歓び、たとい僅かの間ではあっても、ほとんどその感情に自分全体を委せてしまうようなことのあるのは、嬉しいことではなかった。いかにも軽浮な若者らしいことも苦々しかったのである。
単に浩にとってばかりでなく、お咲の病気は家中の者の心に、大変有難い目醒めを与えた。散り散りバラバラになっていた幾人もが、彼女のために一かたまりになって働くというのは、今まで感じられなかった互の位置とか力量とかを認め合う機会ともなり、かなり純な同情をお咲に持つことも出来させて来た。いろいろな苦労はあっても、皆の心は割合に穏やかに保たれていたのである。
その晩は大変蒸暑かった。星一つない空から地面の隅々まで、重苦しく水気を含んだ空気が一杯に澱んで、街路樹の葉が、物懶そうに黙している。