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じつげつボール
日月ボール
小川 未明
「国民新聞」1930(昭和5)年5月4日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,923 字 · 6 页
いいお天気の日で、空はよく晴れて雲の影もありませんでした。山や、谷の木の葉は、きらきらと日に輝いていました。ちょうど高い山の頂にさしかかると、一人の男が、石に腰をかけて、なにか、しきりにやっています。見ると、金光りのする、日月ボールでけいこをしているのでした。こんなところで、どうしたのだろうかと思うと、きちがいででもあるような気がして、怖ろしくなって急いで、山を下ったというのであります。
「小父さん、どうして、そんな山の上で、日月ボールをしていたんだろうね。」
「だから、きちがいかと思ったのさ。」
「きちがいでなかった?」
「それは、わからない。」
「どうして、そのボールは、金光りをしていたんでしょうね。」
「きっと、金粉を塗ったのだろう。そうでなかったら、重くて、けいこなんか、できやしない。」
「不思議だな。」
「ああ、それからは、小父さんは、夜になって、あちらの空で、星が、ぴかぴか光るのを見ると、あの男が、いまでも、あの高い山の上で石に腰をかけて、日月ボールをやっているように思うのさ……。」
清さんは、こんな話をしました。孝ちゃんは、たとい、きちがいにしても、どうして、一人で、そんなところへいったのだろう? そしてそれから、その人は、どうしたろう……と、考えずにいられませんでした。