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じつげつボール

日月ボール

小川 未明

「国民新聞」1930(昭和5)年5月4日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,923 字 · 6 页

青空文庫

「小父さん、きちがいにちがいないね。」

「いや、そうでないかもしれぬ。」

「そうでないのなら……。」

「ほんとうに、孝坊のように、だれも、ゆかない山ん中で、一心に、日月ボールをうまくなろうとけいこしていたのかもわからないじゃないか。」と、清さんは、笑いました。

「だって、そんな人は、ないだろう。」と、孝ちゃんは、いいました。

清さんは、また、その後、その男に似た男を見たというのです。それは、ある小さな町の祭りの日でした。神社の境内に、見せものや、食い物店が出ました中にまじって、いいかげんに年とった男が、日月ボールを売っていたというのであります。

その男は、赤い日月ボールを手に持って、上手に、ポン、ポン、受けていました。

「さあ、だれでも、じきにうまくなれますよ。こういうように、一度も、落とさずにうまくやれたら、ここに並べてある、外国の切手でも貨幣でも、また水晶・さんご、なんでも、欲しいと思うものをあげます。はやく、日月ボールを買ってけいこをなさい。じきにうまく、それは、おもしろいようにできますよ。」

男は、横を向きながら、また、話をしながら、上手に日月ボールを落とさずに、ポン、ポン、やっていました。