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にちげつさま

日月様

坂口 安吾

「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页

青空文庫

朝食をとって、又、ひと眠りするのが習慣になっていた。

私は翌朝目がさめると、朝食の後、女を帰して、私だけ、もう一眠り、ねむった。ぐっすり眠った。その前日まで、仕事して、過労があったせいもあった。

目がさめると、もう午すぎだ。私は宿の人に頼んでおいたので、風呂がわいていた。風呂からあがって、酒をのんだ。この旅館は、まだ女中がおらず、主人夫婦だけ、子供もいないのである。

「どうも、王子君には、驚いた」

私は宿の主婦に話した。

「あの人の女装にも呆れたが、ゆうべの話しぶりが、どうも、私には解せなくてね、女がモモにホリモノをして、出来栄えが気に入らなくて、肉をえぐりとった、という。これが全然嘘っパチなんだが話しぶりの真剣さは、凄味があって、ちょッと、嘘なんてものじゃアなかったね。モモをえぐりとったという件は、女とねれば、忽ちバレることなんだし、どうも、あの人の気持が分らない。女は王子君を気違いだと云ったけれども、昨夜の一件をのぞいて、気違いらしいところは見当らないのでね。女と相愛の仲かと思えばそうらしくもなし、むしろ女に甜められきっているという風なんだね」

主婦は静かに、うなずいた。