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にちげつさま
日月様
「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页
火の手が一ヶ所からくるわけではなく、焼夷弾をマンベンなくバラまかれるのだから疎開道路などは一文の値打もないのである。後日完全無欠の焼け野原となり、もうけたのは町会長とか、そういう連中で、疎開でねじ倒した材木だけ焼ないのがあったから、無断チャクフクして旬日ならずして新築した。
王子君五郎君も、哀れ、疎開の運命となった。賭場などへ通い、国民酒場の行列の先頭組のくせに、まったく能がないのである。荷造りし、それを田舎へ運ぶ段取りが手際よく行かない。荷物の発送が誰よりおくれて、そのとき、私の家へ一週間ばかり泊めてやった。
終戦直後、上京した時、さっそく私を訪ねてきて、私の一室へ住みたそうであったが、近所の罹災組がたくさんいて、まるで収容所のようなものだから、彼氏の居る場所がない。三四日泊って、ほかに部屋を見つけて引越した。
その後、まだマーケットなどゝいうものがハッキリした形で出来上らない路上で、彼が品物を売ったり買ったりしているのを見かけた。私が彼をヤミ屋とよんだのはそのせいである。それも半年ぐらいのもので、まもなく彼の姿は私の散歩区域では見かけることが出来なくなったのである。