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にちげつさま
日月様
「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,162 字 · 23 页
私の訥々たる説明をきき終ると、彼は非常に情けなそうな顔になった。私は彼を慰めるのに骨を折ったほどである。
「御退院もお近いようで、御元気な御様子を拝見致しまして」
と、彼は急に、改って、よそ行きのような別なお愛想を言いだした。
「あんまり、つめてお考え遊ばしますからでございましょうが、又、先生が、華々しくお活躍あそばす日も近いだろうと思いますと、私のような者でも、心うれしく、甚だ光栄でございます。御退院の節は、ぜひお立ち寄り下さいまして」
と、住所をコクメイな図面入りに書いて帰った。そこはさる盛り場の碁会所で、自分の家ではないけれども、昼間は、必ずそこにいるからと云った。
退院してまもない夕方であった。彼の住む盛り場の近所へ所用があって出向いたが、そこは私の始めての土地で、おまけにその日は一人であり、知っている土地へ戻って一杯やるのもオックウであり、さりとて飲むべき店も見当がつかない。私は王子君五郎氏を思いだした。彼の厚意に報いるにもよい機会だから、誘いだして、このへんで一杯のもうと思ったのである。
碁会所はすぐ分った。
「王子君五郎さんはいますか」