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しゅんせつせん

日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集

葉山 嘉樹

葉山嘉樹『日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:浚渫船、乳色の靄、生爪を剥ぐ、労働者の居ない船、坑夫の子。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,935 字 · 73 页

青空文庫

労働者の居ない船

こう云う船だった。

北海道から、横浜へ向って航行する時は、金華山の燈台は、どうしたって右舷に見なければならない。

第三金時丸――強そうな名前だ――は、三十分前に、金華山の燈台を右に見て通った。

海は中どころだった。凪いでると云うんでもないし、暴化てる訳でもなかった。

三十分後に第三金時丸の舵手は、左に燈台を見た。

コムパスは、南西を指していた。ところが、そんな処に、島はない筈であった。

コーターマスターは、メーツに、「どうもおかしい」旨を告げた。

メーツは、ブリッジで、涼風に吹かれながら、ソーファーに眠っていたが、起き上って来て、

「どうしたんだ」

「左舷に燈台が見えますが」

「又、一時間損をしたな」と、メーツは答えて、コムパスを力一杯、蹴飛ばした。

コンパスは、グルっと廻って、北東を指した。

第三金時丸は、こうして時々、千本桜の軍内のように、「行きつ戻りつ」するのであった。コムパスが傷んでいたんだ。

又、彼女が、ドックに入ることがある。セイラーは、カンカン・ハマーで、彼女の垢にまみれた胴の掃除をする。

あんまり強く、按摩をすると、彼女の胴体には穴が明くのであった。