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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

箭竹

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,547 字 · 23 页

青空文庫

二百石の書院番で家財といっても多くはない、お上に収められるもののほかは僅かな衣類と仏壇だけがめぼしいものだった。ふだんつましく家計を守ったけれど、結婚して三年めであるし、安之助が生れたりして貯蓄は乏しかった、それで売れるものは売って、召使たちの餞別の足しにしなければならなかった。

城から上使が来たのはその翌々日の朝のことだった、みよは水髪に結い、着替えをさせた安之助を抱いて上使を迎えた。

「べっして大切なるお役目ちゅう、私の争いによって刃傷に及びたる始末、重罪をも申付くべきところ、即座に自裁して責を負いたる仕方しんみょうに思召され、よって食禄召上げ遺族には領内追放を申付くるものなり」おたっしの趣意はそういうものだった。それから上使の役人は久能山で没収した百記の遺品のうち、金二枚に小銭のはいっている金嚢と、大小ひと腰のかたな、それにひとつかみの遺髪をとりだして渡した。上使をおくりだしてから、みよは仏壇にあかしをいれ、良人の遺髪をあげて、香をいた。そして安之助とふたりしてその前に坐ったとき、はじめて思うままに、しかしこえをしのんで泣いた。

「安之助、さあ、お手を合わせて、よくおがむのですよ、こうして」