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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

小指

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,032 字 · 22 页

青空文庫

ということを、改めていいだした。

「そうですね」平三郎もすなおに頷いた、「……適当な者があったら貰ってもいいですね」

「本当にそう思ってお呉れですか」

「ええ本当です、但し私はもう見にゆくのはいやですよ」彼は笑いながらいった、「……母上にお任せ致しますから、お気にいった者を貰ってください、こんどは変なことのないようにしたいですからね」

久方ぶりで、なお女も明るくなった。

こっちから捜すとなると、さて良縁と思うものはなかなか無かった。平三郎の年が年だし、長いこと縁談を断わり続けて来たので、頼むにも色いろ差障りがあったから、……それでもその年の秋、亡き新五兵衛の七年忌ま近になって、やや似合と思える相手が二三みつかった。

「七年忌の法会でも済ませたら、はっきり定めることにしましょう」

なお女はそういって、楽しげに候補者をあれかこれかと選び悩んでいるようすだった。

法要は、川越にある菩提寺で行なわれた。平三郎は寺からすぐ江戸へ帰ったが、なお女は親族の家に三日滞在し、秋深い武蔵野のそこ此処を見物したうえ帰途についた。……それは薄ら陽の底冷えのする日だった。城下町を出て、芒や雑木林の続く道を暫くいったとき、ふとその辺に小間使の八重の生家のあったことを思いだした、――どんな風に暮らしているかしら。