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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

小指

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,032 字 · 22 页

青空文庫

三

「いいと思います」

「鹿島がよろこぶだろう」新五兵衛は頷きながらそういった、「……だいぶ熱心にすすめていたから、この家も賑やかになっていい」

平三郎は、そんなものかしらという顔をしていた。

その明くる朝だった。出仕の支度をしているとき、小間使の八重が、「いよいよお定りになりましたそうで」と問いかけた。平三郎はうんと頷いた。八重の顔には若い主人の幸福をよろこぶ色が溢れていた。なにかでそのよろこびを表現したいようだった。着替えの品を揃えたり、袴腰を当てたりしながら、つきあげるような眼で平三郎の姿を眺めつづけたが、やがて思い切ったように、「さぞお美しい方でございましょうね」といった。そして、自分でもなぜかわからずに、さっと赧くなった。

三

たぶん、はしたないことを口にしたからであろう、そう思いながら、八重は急いで面を伏せ、平三郎の足許へすり寄って、いつものように袴の襞を揃え、下へ軽くとんとんと引いた。……そのとき平三郎は上から、自分の前に跼んでいる八重の姿を見下ろしていたが、ふと自分の心に説明しようのない感動がわきあがるのを覚え、結びかけていた羽折の紐をそのまま、「はてなんだろう」