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にっき

日記

宮本 百合子

17 観劇日記(一九二九―一九三〇年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,770 字 · 36 页

青空文庫

その下を、頭をいがくりにした赤ル※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ーシカの男、花模様のプラトークを頭からかぶった婆、外国の(それ丈でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)女には既に或感じを与えるところの)伯林トリコを着た女などが歩いた。

◎ペトロフスカヤ・カッサは入ると、左右にガラス戸のある、右だ。

ひどい人、人、人、

――列に立ってるんですか

――そうそう

――だれがおしまいです?

――往来の上だ

押し合って立ってる。

一人の女が神経質な声で

――どうしてるんだろう! そっちのカッサじゃ、だめなのかしら

――あっちはコンツェルトのカッサですよ

肥った男が答えてる。長靴だ。アストラハン帽をかぶってる

――ラーズベ〔ほんと?〕

すると男はふざけて

――貴女にコンツェルトの切符が御いりなんですか?

顔をのぞかれて女

――いいえ、いいえ

本気でニェート、ニェートと云った。

又永いこと立ってる。

前の人ごみの中から芝居で田舎婆さんの喋る、そっくりな歯のないフガフガした口つきで、大劇場の切符をきいてるのが聞える。

――あんな婆さんまで大劇場でオペラをきくんだ。

――きっと大いに音楽的なんでしょう