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にっき
日記
宮本 百合子
「文芸」1935(昭和10)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,083 字 · 7 页
紙がしめっているうちに細かくたたいて字を出すんだと云うようなことを話し、話しながら自分も表をかえし、裏を返し、紙型を眺めている。その様子を私がある感情をもって眺めている。
やがて宮本が楽しそうに体を伸してそこへ横になった。一寸経って私もそのそばへ横になった。膳を控えて並んでいる男の人達はやはりそこに膝を並べていて、今は顔を動かし何か話している。言葉はききとれないが、その話は何かそっちだけの話だということが分り、こちらはこちらで横になり、全くこだわりなく、自然である。独特にゆったりとして息つくのにらくな雰囲気を深く感じながら私は目をつぶっていたようだ。
夢がさめると一緒に私は眼をあけて、びっくりしたように自分のまわりを見まわした。今に起きて仕事をしようと思って点けっぱなしにして置いたスタンドの緑色が動かず静かに枕元に灯っている。
夢の中で或る間隔を置いて並んで横になっていた私に感じられていた宮本の体の量感が、さめてのちもはっきりと私の横に残っている。深夜の天井を大きく見ひらいた目で眺めながら、私はその感じに沈んで寝ているのであったが、次第に強く感情を動かして来るものを心の中に感じ、私は大きく寝がえりをうち、暫くして起き出した。