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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页
私と神楽坂
髪の刈り方髯の立て方の流行にも、思うに幾度かの変遷を見たことであろう。わけてそこに立ち働く若い理髪師達の異動のはげしさはいわずもがな、そこの主人の細君でさえ、中頃から違った人になった。多分前の人が病気で亡くなりでもしたのであろう。又そこへ来る常客の人々の身の上にも、それこそどんなにか、色々の変化があったことだろう。単にその外貌だけについていっても、例えば私のように、血気な青年だったものがいつかすでに半白の初老に変じたものもあろうし、中年の壮者が白髪の老者に化し、又白髪の老者がいつかその姿を見せなくなったということもあるだろう。更にまた昨日まで母親や女中に伴われて、クル/\坊主にされに来た幼児や少年が、今日はすでに立派なハイカラな若紳士姿で、そのふさふさした漆黒の髪に流行の波を打たせに来るといったようなことも多いだろう。私はそこのかぎ形になった二方の壁にはめ込まれた鏡に向い、最近急に、自分でも驚くほどに変った自分の顔貌をうつし眺める毎に、いつでもそうした事など考えては、いろ/\の感慨にふけるのが常である。
私と神楽坂
それにしても、私はこれまで幾度その鏡に私の顔を姿をうつして来たことだろう。