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はやみみさんじとりものききがき

早耳三次捕物聞書

林 不忘

04 海へ帰る女

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,707 字 · 12 页

青空文庫

」

和泉屋の額部に砂がついた。が、女はそれには何とも答えないで縷々としてつぎのようなことをいいだした。

なんでもかの女の主君、すなわち竜神様は大分口が奢っているとみえ、海の底でどうしてお燗をつけるのか知らないが、和泉屋の上酒を熱燗で一ぱいきゅうっと引っかけなければ御意に召さない。それでこの女が毎夜ああして小買いに来たわけだが、あまり酒の味が好いので、竜神さまこのところすっかり嬉しがってしまい、近いうちに自身陸へ上って和泉屋を訪れ、いまだ人界に知られていない家業繁昌の秘法を親しく主人に伝授したい希望を側近の者に洩らしているとのこと。

と聞いて、今度は和泉屋が嬉しがった。どうかいつでもお越を願います。と女に頼んでみると、善は急げというからしからば明晩がよかろう。竜神のほうは大丈夫わたしが仲に立って纏めてみせるからそれではこうこう、こうして待っていて下さい。時刻は丑満、わたしが竜神を御案内します――話は早い。万端なにくれとなくてはずを決めて間もなく女はいそいそとして波間へ消えて行った。

さて、何しろ今夜こそはお顧客の竜神がやって来て、人の知らないありがたい御法を授けて下さるというので、つぎの日一日、和泉屋の主人は上の空で暮らした。