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めいあんよめもんどう
明暗嫁問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页
お笛こと、そのもとなどは若気の分別にてひき取りしならめど、国老職を継ぐべきそのもとの妻として、又なき素性資質たること、拙者こそ篤と見ぬき申し候」ちょっと自分の鑑識の重みを利かしたわけである。「……なお一つ、ひそかに明かし遣わしそろ、そのもとはおのれ独り粋な女房を持つなりと己惚ておるやも知れねど、それこそ世に云うばかの独りよがりに候、なにを隠さん、拙者の亡き妻、すなわちそのもとの伯母お信こそ、拙者若くして江戸詰めのおり娶り候ものにて、親元は中村太郎左衛門なれども、まことは柳橋にて嬌名たかかりしお紋と申す名妓にござ候、なんと一言もあるまいがな、……にて候」どうだといわんばかりに、老人は片手でつるりと額を撫でた。なにしろ福山と江戸柳橋では段が違う。老人たいそう鼻が高いところである。「されど念のためお断わり置き候、伯父、甥と、二代つづいての粋な妻、こはこれ断じて世に誇るものには之無くそろ、そのもとの子には構えて構えて、いかなる理由に依るとも固く禁ずべく候」
書いている脇の窓から、一匹のきりぎりすがとび込んで来て行灯にとまったが、そのとき澄んだ