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めいじぶんめいしじょうにおけるふくざわおう

明治文明史上に於ける福沢翁

大隈 重信

「慶應義塾學報第百拾七號」慶應義塾學報發行所、1907(明治40)年5月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,696 字 · 14 页

青空文庫

〔思想界の大革命と破壊的大運動〕

〔思想界の大革命と破壊的大運動〕

それについては私ども沢山実験がある。その実験の一つを諸君に御話しすることが必要である。多分知っている御方もあるだろう。そうこうするうちに王政維新となって、幕府二百五十年の栄華は終りを告ぐるという時に、福沢先生は小禄ながら幕府の禄を受けておられる。幕府の禄を食むということは有志家などから見るとよほど不思議に見えるけれども、そうでない。先生の心では国の文明を進めようという目的から、幕府が潰れようとも、伏見の敗北が起ろうとも少しも頓着しないのである。多分鉄砲洲か新銭座の勤番長屋に書生を集めて講義をやっておられた。こういう訳である。

ところで当時の多少学問のある人達は皆幕府が傭って開成所というものを造って、外国の文書を翻訳させるということをやった。その仲間は皆西の丸に集って、これは容易ならぬ事である、薩長が天子を擁して幕府に向ってこういう乱暴をする、これに反抗をしようという相談が起ったのである。ところが先生は何度使いをやっても行かぬのである。どうも強そうな奴だが臆病な奴だというのでその仲間が先生の所にやって来て、なんで貴様は腰を抜かした。