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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
その会話のすべてについてではなく、一句についてである。
「生きているのはやさしいが、死ぬのはむつかしい」
まったく謎のような言葉である。いろいろな意味に解せられるが、どの答えもこの事件の答案にふれているようには思われない。
光子は駒守によびつけられて叱られたのは、云うまでもなく良伯が告げ口したためだ。あの悟りすました坊主のようなトボケた良伯が、この会話によって告げ口したのは、よくよく重大な意味が会話の裏にひそんでいるために相違ない。
その結果として、文彦が後嗣であり、風守には後嗣の資格がないことを、駒守は光子に明かにしているのだ。そのワケが、この会話のどこにひそんでいるのだろうか。
「すでに遺言状もあるが、まだ文彦の後嗣たることを公表する時期ではない」
時期ではない。妙な言い方があるものだ。時期とは、何をさしているのだろうか?
「母なき子あわれ。母ある子幸あれ」
という一枝の呪文をきいて、駒守は岩がゆれだすように高笑いして、詩心はあるが、バカな奴メ、とアッサリ片づけているのである。そこにも意味がありそうだ。
すべてそれらのことは、コクリサマの後に、英信が妙に確信をもって木々彦に答えた言葉によって、真相の核心にふれている何かが目ざましく閃きたっているように感じられるのはなぜだろう。