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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

時田は泥酔して足腰も定まらないほどだったというから、自宅へ帰れずその途中の母里のところへ泊ったのかも知れぬ。玄関の泥の足跡がもつれていたのはその証拠のようであるが、ハゲ蛸の話だとポツポツきたのが二人が去って十分あとだというのに、お手が鳴って三枝子がハイと立ったのは大雷雨の絶頂に達してからで、すくなくとも彼らがハゲ蛸をでてから一時間あとでなければならぬ。ハゲ蛸から母里家まで並足で三分か五分ぐらいのもの。くらい夜道で、どうもつれて歩いても、二十分か、三十分後に到着しない筈はない。

「変だなア。お手が鳴ったのは、たしかに大雷雨の真ッ最中になってからだそうだが、口論の起りが三枝子さんのことで、殴った方が栃尾だとすると、栃尾は三枝子さんにかねて懸想していたのかも知れないようだ。他の三名の召使いがカミナリデンカンだということを一同が知っていたとすると、栃尾がある目的でひそかに忍びこんだと疑うこともできる。さすれば奴めの本が落ちているのは当然だ。奴めは時田に貸した本だと云うが、あのシャア/\と人を食ったことを云う栃尾の言葉が信用できないのは分りきったことだ。だが、まア、時田に先に会ってみましょう」