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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

時田の家はハゲ蛸と母里家の倍あって、母里家がちょうどマンナカぐらいである。非常に広い邸で、父母はすでに死んでるが祖父が、健全だ。時田は大学を卒業すると祖父が隠居して彼が家督をつぐはずで、それは来年のことだという。相当な財産家らしい。多くの女中はよくシツケがとどいていて、時田はすでに当主のように扱われているようだ。来客中で、それは由也であったが、洋風の大きな応接間へ現れた時田は女中の不用意な言葉を遠山巡査からきくとやや狼狽して、その事実を否定した。

「時田さんはメガネをかけてらッしゃると伺いましたが、どうかなさッたのですか」

重太郎にきかれて、時田は蒼ざめた顔をあげて彼を睨むように見返した。腹をすえたような感じであった。

「メガネは部屋においてますよ。つまらぬことはやめて、用件を云いたまえ」

遠山がひきとって、

「実はそれが用件なんですが、あなたのメガネと思われるものが妙なところから現れたのですが」

そこまでは時田は実に平然ときいていた。と、遠山が意外にも、

「実はそのメガネは母里さんの裏庭の井戸の底から出て来ましたが」

テコでも動くまいと思われた時田の顔に、まるでポッカリと大穴があいたようなビックリ仰天の表情が現れた。