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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

14 その十三 幻の塔

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页

青空文庫

それ、二人ながら、麻の丈夫な袋を腰にブラ下げでいる。だが、この殺しッぷりは、まア、お前ではなさそうだが、わざとヘタに刺す手もある。とにかく殺したものがウチの誰からしいのは確かなようだ。信じ難いが、信ぜざるを得まいて」

三次郎も大きな福助頭をうなずかせて、

「どうも仕方がありません。みんな酔い痴れていたようだから、誰かが夢中でやったのでしょうか。実に困ったことだ」

警察へ届けでる。さア、怪物の邸内で奇怪な殺人が行われたから、噂は忽ち街を走る。御近所の海舟の耳には一時間もたたないうちに耳にとどいた。

「新十郎に知らせるがいいぜ」

と、海舟はちょッと考えて、侍女に云った。

「取り調べのあとで、御足労だが立寄って下されたいと鄭重に頼みなよ」

そこで新十即は花廼屋に虎之介の三騎づれ、馬を急がせて駈けつける。

新十郎は現場を見て、おどろいた。

「ありうべからざることだ」

さすがの新十郎も現場を睨んで、しばし茫然。ようやく発したのがその一語であった。

二人の死体をていねいに調べた。

「この麻の袋は何を盗むツモリだろう? 室内には二人の足跡もない。しかし、とにかく、誰かが殺したことは確実だ」