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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

13 その十二 愚妖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,839 字 · 55 页

青空文庫

タテに四ツ並んでいるのは、横に倒れたところを突き刺されたことを示している。腹部の二ツは角の根本まで深くやられて、えぐられた後に角に突きあげ振りまわしてはねられたらしく、傷口は四方にちぎれて大きな口をひらき、ハラワタがとびだしていた。

「牛に追われて逃げそこなって倒れたところを突かれたのに相違ない。だが、妙だなア。正面から突かれているのに、まるで背中から突き伏せられたように、口が土をかんでるじゃないか。鼻の中まで土がついているぞ。突かれたあとで、ころげまわって、もがいて死んだのかも知れない。しかし、手は土を握っていないな。見れば相当な身ナリだが、どうしてこの山中へ来たのだろう?」

菅谷巡査はこう怪しんだが、牛が犯人ときまれば、問題はナガレ目のアルバイトの方だ。徳川時代には死刑になった者もあるという人も怖れるアルバイトを自分の駐在する村の者がやっておって、それを自分が気附かなかったというのが、面白くない。

ところが屍体の身元が分ってみると意外である。小田原の者であるばかりか、ガマ六と同じ町内の者だ。ガマ六の遊女屋と筋向いの「花房の湯」の主人、雨坊主というアダ名のあまり良からぬ人物の一人であった。