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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
05 その四 ああ無情
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,336 字 · 47 页
「この行李の数が一ツ減ってやしないか」
「そうですねえ。そう云えば、なるほど、以前は七ツあったかね。するてえと、一ツ減ったかも知れないね。なに、空ッポで、中には何もはいってやしませんので」
新十郎は下を見廻して、
「フム。一寸釘が至るところに散らばっているなア」
独り言をもらしたが、彼の目は一点ももらさぬようなきびしさで、小屋の中を隅から隅まで見て廻った。
彼は一点を指した。
「ここに何かをひきずッた跡がある。出口へ向って三間ほども。何がひきずられたか」
彼は人々の顔を見廻して笑った。そして叫んだ。
「死体をつめた行李!」
★
その晩、花廼屋と虎之介が新十郎の書斎へ遊びに行くと、彼は机上の白紙に図面をひいて、先客のお梨江と二人考えこんでいた。見ると、上野だの本郷だの浅草だのと書きこんだ図面であった。
新十郎は図面を四人の真ン中へひろげて、説明をはじめた。
「ヒサが自宅を出たのが午前十時半。飛龍座へ到着したのは十一時ごろでしょう。飛龍座へ到着匆々小山田に抱きすくめられて夢之助の部屋へ逃げこみ、ちょッと伏せったのですが、ヤスが主人の姿が見えないと云って騒ぎだしたのが午後一時ごろ。