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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
07 その六 血を見る真珠
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,951 字 · 51 页
彼はそのヒゲをきりとるのに相当の時間を費したほどであった。
「ほう、今度は白蝶貝の主だな」
貝を一目見て畑中は軽く呟いたが、清松のただならぬ顔を見ると、ゾッとして口をつぐんだ。殺気であろうか。何か死神の陰のような陰鬱なものが、その顔から全身から沈々と立ちのぼっているように見えた。
作業を終って昇龍丸へ帰ると、清松は畑中に頼んだ。
「済みませんが、その白蝶貝だけ、今さいて見せて呉れませんか。中が見たくて仕方がないものですから」
「そうかい。なるほど、こいつは確かに白蝶貝の主だなア。これを採っちゃア中があけてみたいのは人情だなア」
そこで一同を甲板へ集めて、その老貝だけさいたのである。はからざることが起った。黒真珠の更に倍もあるような、白銀色サンゼンたる正円形の巨大な真珠が現れたのである。実に五百三十グレーン。世界最大の真珠である。古来の伝説に於てすら語られたことのない巨大な真珠であった。
その真珠を手にうけとって眺めまわしていた清松の額から冷汗が流れ、目が赤く充血してきた。吐く息が苦しくなった。人々は呆気にとられて彼を見つめた。清松は黙々と宝石を畑中に返した。