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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
08 その七 石の下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,242 字 · 65 页
デップリふとって、目から鼻へぬけるような鋭いところは表には現れていないが、碁は相変らずの好きな道で、石を握れば、今もって江戸の素人では並ぶ者なし、彼を打ちまかす新進の素人天狗は一人もでたことがない。折にふれて思いだすのは千頭津右衛門のこと。
「彼奴ばかりはメッポウ強かったなア。オレを打ち負かした素人碁打は天下に彼奴一人だが、よくもこッぴどく打ち負かしおったものだ。オレを負かしてトタンに血を吐いて死んだのも、鬼神の力を借りてオレに勝ったがために、約束によって鬼神にイノチを召されたのさ。さもなきゃオレに勝てやしねえな」
と、ウヌボレはいくつになっても治らない。この甚八のところへ、ある日、千頭家から使いの二人の男が現れた。中年者は安倍地伯といって、津右衛門の寡婦千代の実弟。その連れの若い男は地伯の妻比良の弟で和具須曾麻呂という者であった。その口上をきくと、津右衛門の二十一周忌の法要を営むについて、仏の急死に縁の深い甚八にもぜひその席につらなっていただきたい。急死に縁が深いといえば語弊があるが、二十一周忌という昔話になれば、あれもこれもなつかしいばかり。仏もさだめし甚八を、また彼との最後の対局をなつかしんでいるであろう、というような話であった。